フォラクレ⑤Schnapsidee「クレーバー、どうかしたのかね」
テーブルの向かいでフォークとナイフの音が止まる。フォラーの声にクレーバーは顔を上げた。
「君がステーキを3秒で平らげないなんて、体調でも悪いのかね」
いくら俺でもステーキを3秒では無理だと笑った顔は、いつもより力がない。
「ちょっと腹の調子が……」
「どこかで何か変なものでも食べたのか?」
「べつに野良犬みたいにゴミを漁ったりはしてないですよ」今は、とクレーバーは心の中で付け加えた。
「たいしたことない。ちょっと食欲がないだけなんで」
そう言いながらもフォークを皿に置いた彼を見て、フォラーは「いいものがある」と言って立ち上がった。
しばらくして彼は茶色の瓶と小さなグラスを二つ持って戻ってきた。
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