小小SS 背後で揺れ動く気配で、『小狼』は目を覚ました。
(……また、か)
慣れた予感に、ぱちりとまぶたを開ける。薄暗い視界の中、カーテンの隙間から朝焼けの赤い光が射し込んでいた。
この世界に着いて早一週間。
治安はよく、景観もよい、阪神共和国にも似たこの土地で、一行は運よく仮の住まいを手に入れた。
大部屋が二つあったため、年上の同行者たちとは寝所を分けた。白くて小さい道先案内人は、今晩は向こうの部屋を選んだようだから、今ここにいるのは『小狼』たち二人きり。
ギッと小さく響いたのは、背中合わせで眠る彼の歯ぎしりの音。
「…………」
『小狼』は、多少の眠気の残る眼をこすりながら、上体を起こした。
ベッドに手をつき、背後を見る。薄手のタオルケットを体に巻きつけ、胎児のように膝を丸めて眠る彼が、
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