わが恋の墓標パロ長命者の労働をとりまく環境は、あまりに悪すぎる。
竹之内を相手に、雪村が白い髪を掻きむしって憤慨したのがはじまりだった。
公共の職業安定所の営業時間は夏も冬も午後六時まで。これじゃあ夜しか動けない俺たちオキナガは仕事に就くなと言ってるようなもんじゃねえか。オキナガの生活を守るのはあんたの専門なんだろ。
愚痴を聞いていた竹之内は新聞をめくりながら、顔も上げすに言った。
「それなら当事者から声をあげるべきだな。俺一人になにもかも頼られても困る」
少し頰をふくらませ雪村は押し黙った。
雪村は光明苑が長野に移ったのを機に社員寮付きの仕事に就いていたが、オキナガを嫌う先輩社員たちの度重なる嫌がらせに据えかね、とうとうその中の一人を殴り倒した対価に仕事と寮を無くして竹之内を頼ったのだ。それから二十年あまり、下宿生活は続いている。
9924