指輪『俺、枯れない花って好きじゃないんです』
『花も人も、いつか終わりがくるから美しい』
オリヴァーの言葉が何度も脳内で再生される。そしてその言葉で想うのはこの世の誰よりも気高く美しく護りたい存在、主君のカシムだ。自分自身が傷を負うより自分が愛する人が傷つくことのほうが胸が苦しい。
カシム様はどう思われているのだろうか。
自室に戻る最中もカシムはいつもと変わらず先陣を切り、余裕ありげに歩を進める。
主に仕えてもう長いというのにザイードはこういった状況のカシムの気持ちを汲み取ることが難しい。ポーカーフェイスな彼の後ろ姿を見ながら、傷ついていないでほしいと願っていた。
「どうぞ、カシム様」
ザイードが扉を開くとカシムは無言のままベッドへダイブする。たくさんの装飾品たちがぞんざいに扱われたことへ腹を立て一斉に音を鳴らしたが、その声はすぐにシーツに埋もれてしまった。その間もカシムは何も言わず枕に顔を突っ伏したままだ。
1925