舞台を降りても共に圧巻のラストラン後、あっという間に年越しを終え、現在は1月末。引退したとて、今までこなしてきた学園での日課は、急に身体から抜くことは出来ず、早朝から軽く走り込みをしていた。誰もいないターフの上、白い息を吐きながら気持ちよく走った。頬を撫ぜる空気は痛く冷たいが、気分はこの上ないほど清々しく、気持ちの良い朝だと感じる。
「……あら」
「ジェンティル」
コースを二周ほどして、休憩をしようと脇に置いてある一つのベンチに近寄ると、そこには珍客ーーーオルフェさんがいた。
彼女は約一年前の有馬記念で既に引退し、レース界から身を引いている筈だが。様子を見るに、彼女もウマ娘の本能が抜けきれていないらしい。証拠に走る気満々とでも言いたげな態度で、学園指定のジャージを着ている。
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