GuiltyWhite その建物は箱のようだった。建築法を違反しているのではないかと思うほどに窓が少ない。そして真っ白だった。入口の扉も白、長方形の壁は全て白。そして内部に至るまで白一色だった。
箱の中も白い。箱の中の人物も。
「ななみ」
男は真っ白だった。何もかも。
箱の正体はとある研究所だった。それも一般的ではない。研究対象は主に超能力者といわれる人々であり、その力を持って国家に害をなそうとするいわゆるテロリストだ。七海はそこで働いていた。テロ思想など端からなく、なぜ所属しているのかと言えば、なりゆきといったところ。決して危険思考は持ち合わせてはいない。
古い知人の口車に乗せられて、あれよあれよと従事することになってしまった。自身が犯罪者の一員になってしまったことはとうに諦めた。むしろ早く摘発されればいいとさえ思う。その先が死刑であれ、七海は何も思わなかった。ただ一つの気がかりを除いて。それはここで研究対象となっている超能力者たちだった。自らの力を信じ、率先してテロに加担する能力者がいる。そいつらはどうでもいい。七海が気にしているのは年端もいかない子供や自分の力がよくわかっていないような者たちだ。
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