あの後飲みに行った 落ち着いたジャズの流れる、こぢんまりしたバーのカウンター席。客もほとんどいない。いわゆる隠れ家的な店だ。バニーは俺の隣に座って店内をそれとなく見渡すと、呟くように言った。
「なんか驚きました。虎徹さん、こういうところでもお酒飲むんですね」
それを聞いて、俺はバニーに過去酔っ払った勢いで送り付けた、飲み会の様子の写真の数々を思い出す。確かにあれは全部チェーン店の居酒屋だった気がする。ああいうところは大人数で騒いでも問題ないからだ。
それに――。
「だって、お前って居酒屋でジョッキからビール飲むタイプに見えねぇもん」
それに、ワイルドな俺と対照的でスマートさを全面的に売りに出しているバニーのことだ。そんなことをしていたら、どっかのゴシップ誌にすっぱ抜かれるだろう。それはそれで女性ファンに……なんていうんだっけ。ギャップ萌え? そういうのでウケるかもしれないが、こいつが望んではいないはずだ。
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