許嫁を忘れないアウラ♂の話。 スイの里は地上での争いから離れ、海底に安住の土地を得ることで血を繋ぐことを選んだ。閉鎖的な里では恋人達の逢引の場所など限られており男女を見下ろしていた。人目を忍んだ逢瀬は濃密であった。形の違う角を何度も擦り合わせ、笑みを浮かべる。
陸の生き物には角はなく、唇で愛情を確かめ合うらしい。私達アウラにはその文化はなかった。何故唇があるのに角を擦り合わせるのかはいくつかの説があるというがお互いの角が邪魔をするからではなく、アウラにとっての角は誇りであり、そこに触れていいものは己が許した相手のみだという説が有力であると父は語る。
水底の里という閉鎖空間で選ばれることの意味は大きく、生涯この相手しか愛さない誓いにも呪いにも思えた。
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