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    キタハル

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    キタハル

    DONE半伝 犬とか猫とかを拾ってきがちな伝と、犬相手に嫉妬しちゃう半が見たかった。山田家の獰猛なネコチャンに関する捏造を含みます。
    仔犬の半助、保護される「ははは、半助、そんなとこ舐めるな、全くもう、あっはっは」
    山田先生が「半助」に顔を舐められて、くすぐったそうに笑う。咎める言葉でありながら声音は楽しそうで、相手を本気で止めようとしているとは思い難い。人間の方の半助はムムウと頬を膨らませた。ここ数日の山田先生は、裏山で拾ってきた仔犬の半助にかかりきりだ。人間の半助の方はなかなか構ってもらえずに、ちょっぴりおかんむりなのである。

    事の顛末はこうだ。裏山の、おそらく生徒が掘ったであろう穴に、仔犬が落ちてキューキュー鳴いていた。そこに日課の朝ランニングをしている山田先生が通りかかった。そこは低学年生の実技でも使うような場所であるため、見目の愛らしい仔犬などが鳴いていては、生徒たちの気が散るのは火を見るより明らかだった。だから授業の邪魔にならぬよう、拾ってきたのだと山田先生は言う。山田先生はどこからか使っていない箱を持ってきて、ご自身の着古しの忍者装束を割いて底に敷き、仔犬をそこに入れた。私事なのに生物委員に任せきりにするわけにもいかないからと言い、それを山田・土井の職員部屋に持ち込む。手慣れた様子ではあるが、なんせ仔犬だ、手がかかる。食事の間隔も短く、食わせるのにも人の手がいる。山田先生の手からすり潰した残飯をおぼつかない様子で食べる仔犬は確かに愛らしい。甲斐甲斐しく仔犬の面倒をみる山田先生も、ご多用ではあるものの楽しそうだ。よく食べた、偉いぞ、可愛いなぁ。そう言って仔犬を撫でるのである。山田家に匿ってもらった時のことを思い出す。出していただいた食事がたいへんおいしく、遠慮も外聞もなくペロリと平らげた時も、感心した様子で鷹揚に褒めてくださったのだった。なんだか、気恥ずかしくて落ち着かない。
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    キタハル

    DONE半→伝 呪ったり攫ったりしてこないタイプの満月の日の話。半が先生になって二年目くらいのイメージで書いてます。半が生まれ持って得意なのが書物を読み解いたり火薬を配合したりすることで、こどもを愛し慈しむ技術は努力して後天的に手に入れた美点だといいなと思っている 善く在ろうとするひとはうつくしいので
    夜に光満月の夜。
    「月がきれいですね」
    などと呑気なことを言って、月見に誘った。
    声をかけられた山田先生は私が情緒を解したとでも思ったらしく、機嫌よく二つ返事で承知した。最近生やしたかっこいいお髭を撫でて、何か菓子でも出そうかななどと楽しそうに戸棚に向かう。残念ながら、この人を誘う理由に使わせてもらっただけなのは黙っておく。山田先生と二人でいる時間は心地よく、嬉しくて、少しソワソワする。
    月見などと言ったが大層なことをするわけではない。学園の教師たちには、有事にはこども達を守る役目もある。軽い気持ちで外出をするのも憚られたし、酔わないとしても酒を口にするのも抵抗がある。紙ばかり睨んでいたら目が疲れてしまいました、廊下に出てぼんやり月を眺めませんか、せっかくの満月ですし、というだけの話である。
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    キタハル

    DONE半伝のつもりで書いてる半と伝 情操教育 いつか自分がいなくなった後も生きていけるようにという親や教師の愛があってほしい気持ちと、いつまでもループ時空で一緒にいてほしい気持ち、心がふたつある
    花の名前「土井先生、見なさい、芍薬が咲き始めましたよ」

    忍術学園の薬草園で、丸いつぼみをほどき始めたシャクヤクを眺め、山田先生はふと顔を綻ばせた。シャクヤクといえば根から鎮痛剤がとれる薬草である。薬がご入用ですかと聞くと、山田先生は私を見て大きくて吊った目をきょとんとさせた後、表情を大きく崩した。
    「かぁ〜っ、あんた、情緒がない男だねぇ。そりゃあ学園にある植物はみな薬草ですけれど、せっかくの花を愛でないなんてもったいない。あたしは芍薬の花が好きですよ。すいと伸びた茎は凛として意志が強そうじゃあないですか。それでいて花は華やかで美しい」

    立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
    美人の例えに使う言葉である。山田先生がシャクヤクの花に誰を重ねているのかを、なんとなく想像がついた。あれは怒らせると怖いですがね、実に佳い女ですよ。わしの妻には勿体無い。正直、いつ振られるか、戦々恐々としとります。あれはわしの戦忍の技量に惚れてくれたんだから、衰えてはいられんのですよ。いつかの酒の席で、恥ずかしがり屋の山田先生が珍しく惚気を零したことを思い出した。
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    キタハル

    DONE半伝(半→伝)、というかでんこさん。ストーカー俺モブを騙すべくラブラブ演技をする半伝を食らって泣いて帰りたかった。認知の歪んだストーカー俺モブが出てきます、苦手な方はお避けください。
    春とストーカーとお団子と花「変な男に惚れられた。半助、助けてちょうだい」
    「またですか?」

    調査のため町に出かけていた伝子さんは、別件で買い出しに町に出てきた私を視認するや否や、無駄のない、しかし軽やかな動きで私の腕を取り、私を路地裏に押し込んだ。少し疲れた表情だ。
    またですか、というのは、これが初めてのことではないからだ。
    紫の着物を着た、艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、きょろりとした大きな目をつけまつげで囲んだ、以前の真紅よりは肌色に合っている口紅を差した男ーー伝子さんは、時々男にモテるのだ。山田先生は変装の腕も良く、何に化けても上手く仕事をするのだが、何故か女装を好んでする。私から見たらどう見ても化け物の類なのだが、所作のせいかツボを抑えているせいか、山田先生を知らない人間にはなぜかあれで本当に女性に見えるらしい。本人がお茶に誘われたと言うのを嘘か冗談かと失笑していたのだが、どうやらそれは本当のことらしい。時々、いや稀に、やまーー伝子さんはこうやって私に助力を求めることがある。いわく、まともな男や立場がある男は断れば済むらしいが、中には粘着質な人間が含まれていて、後を追われたり逆上されたりと、仕事の支障になる場合があるとのことだった。
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