不屈の闘将は西の将軍を夢に見る雪が降っていた。ちらちらと降り積もっては溶けていく水分が芝に絡まり脚運びを重くする。
前方を猛スピードで進むマキバオーを睨み、トゥーカッターと競り合いながら間近に見えてきたゴールを目指す。
残り二百メートル。ここまで来てしまえばもう策も何もない。ただ勝ちたい一心で芝を蹴った。
距離を離されたまま白馬がゴール板の下を通過し観客の歓声と悲鳴が湧き上がる。
だがまだレースは終わっていない。隣を走るトゥーカッターの息遣いと熱気を感じながらゴールにもつれ込んだ。
目蓋を開けばターフではなく柵に囲まれた放牧地だった。雪どころか柔らかな陽射しが降り注いでいる。こうして外で立ったまま、うたた寝をすると現役時代を夢を見る。
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