若生紫雲という名の大罪人について<千秋楽>
彼奴を殺してやりたいと思ったのは何も最近の話じゃない。ずっとずっと昔から俺は彼奴の事が許せなかった。
神も悪魔も手玉に取り、まるでさぞ自分が人生の主役かのように堂々と舞台上を歩く、その姿が気に入らなかった。
「君の役を、茉白くんに変えようと思う。」
目の前にいる灰誓にそう言われた瞬間、釘を刺されたようにその場から動けなくなる。重たい頭を下げて、足元を見つめても現実が脳を叩いて逃げ出すこともままならない。
「茉白くんはどう?」
おい、ちょっと待てよ。
なぜ先に俺に聞かない?なぜ誰も先に俺に相談をしてくれない?数年前のことを覚えていないのか、こいつは。
決別する、と廊下であの脚本を破り捨てた日のことを覚えていないのか、演技をしようと誘ってきたのもお前なくせに。
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