あなたは春の花久しぶりに会った日だまりみたいな男の口から出てきた第一声が「へ?」である。急な来客、シャムスが苦笑するのも不思議なことではなかった。どこからか、朝咲きのフリージアの香りが漂ってくる。
天と地のように互いの住む場所は違えど、上の塵が下に溜まっていくように、ニューミリオンの情報はロストガーデンにもそれなりに届く仕組みになっている。
「ふぅん。コイツ今日バースデーなんだってなァ」
今日とはいつなのか。常夜のように薄暗いロストガーデンでは日付の感覚も曖昧である。
毛先を指で弄りながら、明らかにどうでもよさそうな声色でシンが呟くのを、ゲーム途中のシャムスもまた興味なさげに聞いていた。他人の産まれた日なんて知ったからといってどうということもない。
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