トラウマ持ちの義弟の話 ──いやだ
悪意を持った指が身体中をはい回る感覚に身をよじる。
──こわい
力もない小さな幼い身体はいとも容易く抵抗を封じられてしまう。
──たすけて……
上げられない声に気付く者はおらず。誰も来てはくれなかった。
牧歌の城、モンド城。見える風である風車や穏やかな気候、陽気な人々の喧騒で賑わう平和そのものの街。そんな印象だからか、時々カモを求めて小賢しい[[rb:密 > ﹅]][[rb:猟 > ﹅]][[rb:者 > ﹅]]が入り込むことがある。
「へえ、あんたスメールからここに来たのか。それは遠かったんじゃないか」
「確かにここまで波乱万丈でしたよ、しかしモンドは素晴らしい! 苦労をした甲斐がある。酒はうまいし……きれいなものも、たくさんあって」
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