「冷える前に部屋へ戻ろう」
そう言って差し出されたブラッドの手は、グローブをはめていない私を気遣い、同様に素肌だった。
私とブラッドは、もちろん手を繋いで歩くような関係ではない。
第十三期の司令と、その任について四ヶ月ほどの私のサポートもしてくれている、メンターリーダー。それ以上でも以下でもない。それなのにブラッドが手を差し出してくれた理由は、往路、既に一度私が雪にはまって動けなくなり彼に助けてもらったことと、先程から雪がさらに強まり、視界が悪くなってきたためだ。また雪にはまって置いていかれないよう、エスコートを申し出てくれているに過ぎない。
……過ぎないのだけれど。
「おい! なんでブラッドが司令と手繋ぐ必要があんだよ」
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