永遠の煌めき ――コンコン
静かな空間を震わせる小さなノック音。しんしんと雪が降り積もる極寒のこの地は、音が雪に吸われてしまうことが多く、常にしんと静まり返っている。それ故に、普通なら掻き消えそうな小さなその音も、しっかりと部屋の主の耳に届いた。
王宮の奥深く、限られた人間しか足を踏み入れないこの場所に、自ら訪れる人間などそう多くはない。
「入れ」
扉を一瞥することもなく、手元の書類に目を通しながらカミュは声を掛けた。ややあって、軋んだ音を上げて重い扉が開かれる。そこから現れたのは果たして、想像通りの男がひとり。
「宝石商 寿。推参仕りました」
恭しく両手を上げて拝礼する男は、名乗った通りの宝石商。このノースエリアだけではなく、カルテットエンパイア全域を股に掛ける大商人だ。取り扱っているものが宝石であるが故に各地域の貴族や王族と懇意で、結果的に外交官のような側面も持ち合わせている。尤も、本人の適性がどうかは別の話だが。
1940