松ガス小話2 すでにそれは見慣れた天井だった。
無駄に大きなベッドで大の字になって、暗闇の中でぐるぐると思考が巡る。いつもどおり部屋着に拝借している松田さんのシャツから伸びる剥き出しの腕が、そわそわして落ち着かない。今日に限ってはスェットを履いてしまう、自分の緊張が誰かに見透かされているようで、両足の爪先を重ねるように擦り合わせてみたり、する。
いつもなら、シャワーを済ませて、髪も乾かして、この世の極楽と言える高級マットレスに体を投げ出せばあとは泥みたいに寝るだけ。なのに、閉じたドアの向こうからシャワーの水音が聞こえるんじゃないかと神経が尖って仕方ない。初めてホテルに来た十代の若者でもあるまいし、少しは落ち着きたいのに。
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