人のためにすることは、巡り巡って自分のために。
記憶を失ってしまった時に取り戻したきっかけがこの言葉だ。
大切なものを失って取り戻してくれた。
『彼』は恩人だ。
拾って掬いあげてくれた。そして昨日みたいに鮮やかと蘇る。
里の少年の救いもあったけれど、切っ掛けのお陰で上弦の鬼に勝てた訳だし。
嬉しくなった。空いた胸の中が埋められていく感覚。
熱くなって脈打ち、止まっていた時間が動いていくのを。
刀鍛冶の里の一件で仲は深められたと明らかに解る。
好きになった。でも同時に怖くなった。
好きになのどうして怖くなるんだって不安に思うほど。
知らないうちに自分が別の自分を作り出していくような。
満たされた心の中なのに何故か小さな穴が空いた気分になった。
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