18:45。和泉一織は人を待っていた。
国内有数の高級ホテルのロビー。今夜はこれからこのホテルにある超高級フレンチにお邪魔する。仕事ではない、プライベートだ。
全ての段取りはこれから来る彼がしてくれた。壮五や虎於にリサーチしたらしく雰囲気の良いフレンチレストランをいくつかピックアップして見せて、「どこがいい?」と尋ねてきたのだ。一織は驚いたものの、彼の突飛な行動はこれが初めてではないので、諦めてコース料理のデザートが可愛らしいお店を選んだ。それがこの店なわけだが、いざ来てみると想像よりも雰囲気のあるレストランだ。例えば、隣の席で男性が相手の女性に指輪を差し出して結婚の申し込みをしてもおかしくなさそうな、そんな店。
1916