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    momo__taron

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    【りくいお】プロポーズ

    りくいおオンリー嬉しいから挙げちゃう

    #りくいお
    land-based
    ##りくいお

    18:45。和泉一織は人を待っていた。
    国内有数の高級ホテルのロビー。今夜はこれからこのホテルにある超高級フレンチにお邪魔する。仕事ではない、プライベートだ。
    全ての段取りはこれから来る彼がしてくれた。壮五や虎於にリサーチしたらしく雰囲気の良いフレンチレストランをいくつかピックアップして見せて、「どこがいい?」と尋ねてきたのだ。一織は驚いたものの、彼の突飛な行動はこれが初めてではないので、諦めてコース料理のデザートが可愛らしいお店を選んだ。それがこの店なわけだが、いざ来てみると想像よりも雰囲気のあるレストランだ。例えば、隣の席で男性が相手の女性に指輪を差し出して結婚の申し込みをしてもおかしくなさそうな、そんな店。
    なんだか落ち着かない。当たり前だ、こんなところに来たことなんて今日が初めてだ。
    「一織、お待たせ。」
    そわそわと自分の服装を整え直していると、待っていた相手の声がした。
    「いえ、時間通りですので……は?」
    顔を上げると、一織は眉間にしわを寄せて困惑の声を上げた。
    「七瀬さん、なんですかそれ。」
    一織が指さした先、陸の両手には大量の薔薇の花束が抱えられていた。
    両手でないと持てないほどに大きい花束である。可愛らしい雰囲気の彼が持つと、その大きさから少し威圧感を感じる。
    「一織にあげたくて、買ってきたんだ。」
    陸はふにゃりと笑う。
    買った……? その大量の薔薇を? まさか今を時めくアイドルがどこで……?
    「そんなに何本も買ってどうするんですか。」
    「何本あると思う?」
    「は?」
    陸の返しに一織はまた当惑する。
    「……100本くらいありそうですね。」
    仕方なく適当に答える。
    「惜しいなぁ。108本あるんだ。」
    「なっ……、」
    8本差は惜しいとは言わないとかそんなことを言い返そうとしたのに、その意味に気づいて何も言えなくなってしまった。
    七瀬さん、最初からこのつもりだったのでは。
    「一織なら頭いいからわかるよね。オレが何を言いたいか。」
    リビングでナギや環にクイズでも出すかのように、何でもないような顔をして奴は言う。
    「ば、馬鹿なんじゃないですか。」
    「うん。バカかも。ちょっとオレ浮かれてる。」
    私たちには似つかわしくないような超高級フレンチ。
    全ての段取りを整えてくれたのは彼で。
    食事の後はこのままこのホテルにある部屋を取ってあると言っていて。
    「そんな目立つ物を持ってここまで来て、変な記事でも書かれたらどうするんですか。」
    「それは……、ごめん。」
    どうして気づかなかったのだろう。考えてみればこんなにわかりやすいことはないのに。
    恋人の手にある大量の薔薇の花束なんて、使い道は1つに決まっている。
    「大体、私がそんな薔薇の花束で絆されるとでも……」
    「じゃあ一織、ちょっとこれ持って。」
    「は? ちょっと、」
    陸は無造作に花束を一織に手渡す。
    一織は戸惑いながらも落とさないようにと恐る恐る両手で花束を抱える。
    「えっとね~この辺に、……あった。」
    陸が花束の中央付近を優しく掻き分けると、その中にろっぷちゃんのマスコット人形があった。
    手のひらサイズの小さい小さい、かわいらしい人形。
    その耳に、シンプルな指輪が1つかけられていた。
    108本の真っ赤な薔薇の花束の中心に、青くてかわいいうさぎの人形が1匹。
    「こ、こんなもの……」
    「だめ?」
    「だ……、」
    そんなの、最初から答えは出ている。
    その答えを簡単にこの男にくれてやるのが癪で、小さく抵抗していただけ。
    そして私のささやかな抵抗も彼の中では織り込み済みらしくて。
    ああ、釈然としない。どうしたってあなたは。
    「……だ、だめだめですよ。あなた、アイドルとしての危機感をどこに捨ててきたんですか。」
    「今日は家に置いてきちゃったかも。」
    へらりと笑う彼。ホテルのロビーで大喜利をしに来たわけではないのだ。
    結局はその笑顔に絆される。わかっていたことだ。
    「……仕方ないですね。そんな七瀬さんの面倒を見切れるのなんて、私くらいしかいないんですから。」
    一織はその大きな花束で赤くなっているだろう顔を隠す。
    「んふふ、よかったぁ。ありがとう。」
    ライブでも聞いたことないような甘ったるい声で彼は囁く。
    その声に、頬が熱くなる。
    花束を持つ手を下げ、私の顔を覗き込む彼。
    彼の表情は私と同じ感情で満ち溢れていた。
    「一緒に幸せになろうね。」
    彼は精一杯背伸びして、花束越しに唇へ触れるだけのキスをした。
    胸いっぱいの幸せとささやかな恥ずかしさとで、結局一織はその場で暫く動けなくなってしまう。レストランの予約には1分ほど遅れて入店した。
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