🌹夢 愛之介さん。あなたの将来のお嫁さんですよ。
その意味を正しく理解していたかは定かではない。なにせ年齢は幼稚園あたりだ。不安そうな目が可愛いなとか、同い年なのに自分よりずっと体が小さいなとか、そういうことばかり考えていた覚えがある。遊んできなさいと言われて放り出された庭に、小さな二人がぽつんと残った。
「あいのすけさん、ってよぶように、いわれてるの」
迷路のように入り組む植木の間を進み、ぷらぷらと手を揺らしながら、女の子は言う。この日は春の陽気で、柔らかなみどりの香りが心地よかった。
「でも、そんなのながくていやだ」
僕は怒るより先に笑ってしまう。ちっとも失礼な響きではなかったからだ。彼女は僕を見上げて、ふわりと笑った。
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