チワワ尿意を催し目が覚め、ベッドから這い出て立ちあがろうとしたところで、背後から左腕を引かれて後ろ向きに倒れ込んだ。
「どこに行くの」
勝手に購入、搬入された、女のワンルームにはそぐわないオーダーメイドのでっかいベッドに頭まで布団をかぶって丸まりながら、私の左腕を引き倒した大男の喉から地を這うような唸り声が出る。
その太く形のいい眉は目一杯眉間に皺を作り、眉尻をこれでもかと吊り上げていたし、怒りを感じると長兄と目元が似るので非常に目つきが悪くなっていた。
少し、涙を浮かべている。
「トイレだ、トイレ!あと、よく見ろ、ここは私の部屋、お前と私が乗っているのはお前が勝手に買ったベッドの上!」
言われて、男は、オウケンはかぶっていた布団から這い出て、私の腕を掴んだまま部屋中をぐるりと見渡し、最後に私の目を見て、腕を離した。
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