夢々、遠回り①ないものねだり
黒い夜道をふらふらと歩く直哉は雲の隙間から零れる月夜を見上げてぼんやりとしていた。
はあ、と息を吐けば白かった。
慣れないことをしたものだ、と独りごちる。
飲み慣れないカクテルを何度も胃に流し込んだからか、体がやけに熱かった。
今まで生きてきた人生で、直哉が自惚れを感じたのはこれで二度目になるかもしれなかった。
一度目は初めて禪院甚爾を目にした時だ。
あれは直哉にとって「強さ」というものを鑑みる良い機会になった。
今回は、なんというか。──直哉のせいだというか、禪院だから仕方がなかったというか。
生まれて初めて、直哉は「自業自得」という言葉を噛み締めていた。
己の生き方をねじ曲げるつもりの無い直哉にとって、改善策の見つからない暗黒であった。
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