最初で最期のラブレター。 遺書を書くことにした。
もし、直哉に悟にとっての傑のような、七海にとっての灰原のような友人がいれば、怒り狂いながら止めていたのかもしれないが、閉鎖されたコミュニティの中で育った直哉には、直哉を引っぱたいてまで引き止めてくれる間柄の人間がいない。
正確に言うと、直哉はコミュニティそのものを拒絶し、否定しているわけだから、大前提から叶わないのは言うまでもないが。
とにかく、直哉は遺書を書くことにした。
それは、別に直哉が人生を諦めたとか悲壮感的な、哀愁漂うようなものではないし、絶望などと言った極めてネガティブな感情とは無縁のものであって、直哉はただ「あ、せや、書こう」と思いついたから書いているだけであって、これから死地に向かうわけでもない。
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