ラディエクス小話「貴殿はその兵器を阻止するために赴くのか、アントロポス」
夜半、集合住宅の一室。通信端末から感情の無い声が響く。少女とも少年ともとれる、子どもの声だった。
椅子でくつろいだ様子の男が応える。
「場合によるが、まあそうだな」
「説明を求む」
「本物なら賢者殿が手を打っていないわけもない。阻止するにせよ、利用するにせよだ。俺が拝むのは残りカスかも知れん」
「それでも行く理由は」
「『世界を終わらせる』兵器なら珍しくもないが、見学する価値はあるだろう」
「了解」
「デュナミス、君の調子はどうだ」
「現在は安定している」
「ならよかった。暴走したら今度は国一つでは済まないだろうからな」
純粋な興味だが、と男が前置く。
1958