【腐向け/ジュピボラ】憶えなき彼--------------------
■憶えなき彼
「ボラージュ、髪に何かついている」
「え、何処に?」
確か一緒に食事をしている時だった。
ふと埃のような物が私の視界に入った。
「ここか?」
「違うもっと左」
「…んー…?」
「もう少し耳の近く」
口伝えで場所を示すが埒が明かない。仕方なく私は手を伸ばした。
埃自体はすぐ取れた。
だがその際、髪が少々乱れてしまったので、手櫛で軽く撫でてやる。
やや癖があるが素直な毛質で、指通りがサラサラと気持ち良かった。
「取れたぞ」
一連の所作の間大人しくしていた彼に声を掛ける。
「………」
が、返事が無い。
「ん?」
顔に目を向けると、何だかぼうっとしていた。
私をぼんやり眺めている。
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