さめないうちに 繰り返すノックは、控えめだがしっかりとした音で響いている。ドア越しに呼ぶ声も、穏やかだが少しずつはっきりと聞こえるようになっていた。
シキは息を潜め、身を固くして呼びかけを無視する。しかしノックの音は、部屋の主を行儀よく、そして根気よく待ち続けるつもりのようで、鳴り止む気配がない。
「毎度ー、出前です! 開けてください!」
家宅捜索の勢いだった。ドアの向こうから響いた声に、シキは諦めて席を立った。
「ルーク、近所迷惑、だから……」
「その御近所さんからの届け物だよ。はい、ゴンゾウさんから。コズエさんたちからでもあるけど」
シキは精一杯の不満そうな顔をしてみたが、来訪者にあっさりといなされる。ルークは、緋色の風呂敷に包まれた正方形の箱のようなものを携えてシキの部屋を訪ねて来ていた。
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