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    @BanriSuzu
    BMB用隔離アカウント。成人腐。ドギー総受。(世界線は全部別)
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    いっぱい食べるシキルクです。

    ##シキルク

    さめないうちに 繰り返すノックは、控えめだがしっかりとした音で響いている。ドア越しに呼ぶ声も、穏やかだが少しずつはっきりと聞こえるようになっていた。
     シキは息を潜め、身を固くして呼びかけを無視する。しかしノックの音は、部屋の主を行儀よく、そして根気よく待ち続けるつもりのようで、鳴り止む気配がない。
    「毎度ー、出前です! 開けてください!」
     家宅捜索の勢いだった。ドアの向こうから響いた声に、シキは諦めて席を立った。
    「ルーク、近所迷惑、だから……」
    「その御近所さんからの届け物だよ。はい、ゴンゾウさんから。コズエさんたちからでもあるけど」
     シキは精一杯の不満そうな顔をしてみたが、来訪者にあっさりといなされる。ルークは、緋色の風呂敷に包まれた正方形の箱のようなものを携えてシキの部屋を訪ねて来ていた。
    「体調不良で帰らされたのに、リモートで普通に仕事が進んでいるのが記録に残っていて、でも誰も外に出ているのを見ていないって言うから。心配したんだぞ。熱はないのか? ちゃんと食べてるか?」
    「た……食べてる。熱も、ない……」
    「水分は」
    「摂ってる……」
    「睡眠は。お風呂は」
    「ルーク、……チェズレイみたい」
    「えっ。そ、そうか?」
    「なんで、ちょっと嬉しそうなの……」
     複雑そうな顔のシキが眉を寄せた。
    「それで? 最後に食べたのはいつ? 何を?」
    「本職の尋問……」
    「厳しくもなるよ。ほとんど一人暮らしみたいなものなのに、家の中で食べてなかったら、君が倒れたとき誰も気づかないじゃないか」
    「定期報告は、してる……ゴンゾウさんも、イアンも気にしてくれるし……それに、ルークに言われたくない」
    「え」
    「休みでも、リモートで会議に参加したりして、昼も出席してるから、同僚のひとたちが心配してデリバリー手配してくれてるよね……?」
    「それこそチェズレイといい、それをなんでみんな知ってるんだ……? いや、ともかく。まずは、おつかいのミッションを果たさせてもらうよ」
     そういってシキの部屋に上がり込んだルークは、PCの設置されたスペースとは少し離れたサイドテーブルに風呂敷包みを起き、結び目を解いた。マイカの紅葉のような緋色から中央に向かって白くグラデーションを描くように織り上げられた風呂敷はどう見ても高級な生地で、その中心から黒塗りの箱膳が姿を現した。
    「では、じゃじゃーん!」
     浮かれた様子で、ルークが箱膳の蓋を開ける。
     箱の中は鮮やかな朱色に塗られていて、華やかな料理がいっぱいに詰められていた。昆布締めの刺し身のカラフルな手まり寿司に、桜色をした練り物の団子、今なお油の香り立つ天ぷら、ごま豆腐、青菜のお浸し、魚の焼き物、鶏肉と根菜の含め煮、そして梨などがそれぞれ仕切りごとに入っている。
    「……おお……!」
     届け物の中身は見ていなかったらしい。ルークは新鮮な驚きを見せながら、鼻で大きく息を吸い込んでいた。エリントンに帰ってからは、久しく嗅いでいない香りだったらしく、どこか懐かしそうな顔をしている。 シキはこの差し入れが初めてではなく、少し戸惑ったような、しかしはにかむような顔で膳の中身を見つめていた。
    「コズエさま……コズエさんが、ボクが仕事しながら片手でも食べられるものをって、オカンさんと一緒に、こんなふうに作ってくれて……お弁当は、いつも、すごくきれいに凝ってて。たくさん詰めてくれて、冷めても美味しいように工夫してくれて……」
    「シキの生活ペースに合わせて、丁寧に作ってくれてるんだな」
    「うん……」
     シキはうつむき、胸にきゅっと握った手を不安そうに置きながらも、嬉しそうに頷いた。が、すぐに唇を引き結んで首を振る。
    「けど……ごめん、ルーク。今日は、やっぱりすぐには食べられない。……もう少しだけ、集中させて」
    「うーん……」
     悩むルークの返事も聞かず、シキはワークチェアに戻って背を向けてしまった。脇目もふらずにキーボードを打ち始めた音が部屋に響く。 ルークは黒塗りの箸をとり、箱膳から料理をつまんだ。あれから練習したので、多少は箸使いが上達している。
    「判った。じゃあ、シキ」
    「何? ルーク。今は」
    「はい、あーん」
    「……じゃあ、って」 
     手を止め、シキが振り返る。声にも視線にも呆れを含んでいた。
    「シキは、画面だけ見ていればいいよ。合図するから、そのたびに口を開けてくれたら、食べさせてあげるから」
    「き……機材にこぼれると、困る」
    「あ、それはそうか。……じゃあ、こうやって」
     ルークが箸の先に左手を添える。皿のような形の手のひらに、ぽたりと出汁が滴る。
    「はい」
    「……」
     こうなったルークは退かない。シキは観念して口を開けた。 舌の上に冷たい野菜の煮物がそっと乗った時、押し込みすぎないように気をつけたのか、ルークの箸がわずかに震えたのが伝わってくる。
    「……美味しい」
    「だよなあ 見るからに美味しそうだもんな!」
     咀嚼し、飲み込む。質の良い出汁の塩分が体に染み渡るようで、シキは思わずため息を漏らした。 少し落ち着いた絶妙のタイミングで、次のひとくちが運ばれてくる。ルークの合図で小さく口を開け、小さく切った焼き魚を飲み下した時、ルークが話しかけてきた。
    「なあ、シキ。もしも、の話になっちゃうんだけどさ」
    「なに……?」
    「もし、ハスマリーの研究所でみんな一緒に、変わらず生活していたら……君の成長をずっとそばで見ていたのかな、って。僕が赤ちゃんのシキにごはんを食べさせてあげることなんかが、あったのかなあ、なんて……」
    「……」
    「あ、これで最後だよ。それにしても、本当にどれも美味しそうだったな。これは……梨?」
     普段使いなれない箸ではつるつると滑ってしまうようで、受け皿にしたルークの手のひらに、果汁がぽたりとこぼれていた。落とさないように集中しているのか、手を汚さないのは二の次らしい。
     シキは黙ったまま口を開けた。水菓子が唇に触れ、口を開いて吸い込むように啜る。自分のハンカチで濡れた手のひらを拭いたルークが、しげしげと梨を眺めている。
    「ミカグラの梨は、リカルドの梨と違うと思う……形も、味も……」
    「へえー……」
    「……食べてみる?」
    「えっ、……いやいや! これはシキのためのお弁当だろ」
    「いいよ。今は旬だし、美味しいから……ルークにも、食べてほしい」
     ルークの手にシキの手が重なる。指をほどいて箸が離れ、梨を器用に摘む。ルークの口元に、シキの箸の先が促すようにちょんと触れた。
    「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
     しどろもどろに言いながら、ルークが口を開ける。
     林檎よりも透明な印象の果実は、微かな酸味に爽やかな甘味がルークの口の中に広がった。とろけるような舌触りのリカルドの梨と違って、舌にざらつきと、それ以上にみずみずしさを感じる。特にこの膳の梨は、色の変化を抑えるために、甘くて爽やかな柑橘で香り付けがされているようだった。
    「もぐ、……ん」
     ルークは思いの外硬かった果実を手のひらで押し込み、咀嚼する。歯ざわりも、林檎や馴染みのある梨とはだいぶ違うものだった。
    「これは……しゃりしゃりと薄く剥がれていくような歯ざわりと、きれいに澄んだ甘味が、品種どころかまるで違う果物みたいだ……!」
     ミカグラの梨を堪能しているルークの左手に、シキの手が触れた。出汁の香りと、柑橘と梨の香りが混ざった手のひらに、微かに震える舌先が触れた。
    「んッ……?」
    「ね、ルーク、……美味しいでしょう。甘くて、固くて、塩気があって」
    「え、待っ」
     話しながら、戸惑って逃げようとする手のひらに舌を伝わせる。ルークの手のひらの溝、指の股、水かきの部分までシキは唇で挟んで軽く食む。
    「ひゃ……!」
    「ルーク。やっぱり、ちゃんと食べることにする」
    「え……? い、今、食べ終わったばかり、では」
    「足りない」
    「え」
    「ルークは知らなかったかも知れないけど、ボク……実は、結構、食べるんだ」
    「知」
    「食べて……寝るよ。付き合ってくれるよね、……ルーク」
     じっくりと、噛み締めるように名前を呼ぶ。シキの口が、ゆっくりと開いた。
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    odgr

    SPOILERチェズルク版ワンドロワンライ第38回提出作品です。お題は台詞お題の「逃がしませんよ」で。
    暮らドメバレ、チェとルで某スタイリッシュな軟体動物たちでインクを塗り合うシューティングアクションで遊ぶ話です。今回はチェズルクっていうかチェ+ルというか……チェはハイ〇ラントの面白さに気づいたら大変なことになると思う。
    「やばっ」
     現実でルークが発した声に、画面の中の小さな悲鳴が重なる。
     まっすぐに飛んできた弾丸に貫かれ、携帯ゲーム機に映っていたキャラクターが弾け飛び、明るいパープルのインクがステージに四散した。
    「フフフ……。逃がしませんよ、ボス」
     リビングのテレビの画面では、楽しそうに笑うチェズレイが操るキャラクターが大型の狙撃銃を構えている。スナイパー役のチェズレイが睨みを効かせている間に、テーマパークを模したステージがチェズレイのチームカラーにどんどん塗り替えられていく。スタート地点である自陣に戻され、ルークは焦りと感嘆とを長い溜息に変えて唸った。
     夕食後、ルークがリビングで一息ついていた時、そわそわとした様子のチェズレイにゲームに誘われた。一週間ほど前にルークがチェズレイの前でやってみせたゲームをルークの不在時に練習したので、一緒にやって欲しいという。海生軟体動物と人型を自由に切り替えられるキャラクターを駆使して広大なステージ中を駆け回り、カラフルなインクを射出する様々な種類の武器を用いて、ステージのフロアをチームカラーで侵食しあい陣取り合戦をするその対戦アクションゲームを気に入ったようで、仲間たちと同時プレイが出来るように携帯ゲーム機本体とソフトまで買ってきたという気合いの入れようだった。携帯ハードの方は既にルークの自宅のWi-Fiにも接続してあり、インターネットを介した同時プレイの準備も万端だった。
    2905

    odgr

    SPOILER2014.4.14開催、ウィリアムズ親子オンリーイベント「My Shining Blue star」での無配ペーパーでした。雨で外に出られない休みの日、父さんの身の上話したり『父さんの父さん』の話をしたりする親子の話です。実際こういうシーンがあったら、父さんは『ヒーローを目指すきっかけになった人』みたいな感じで己の父親像を語ってくれそうな気もしつつ。市民を守って殉職した警官だった、みたいな…………
    水底の日 雨樋からひっきりなしに流れ落ちる水が、排水溝に飲み込まれていく。
     あまりにも量が多すぎて溢れそうになっているのか、空気を含んだ水が排水管の上で波を立て、とぷとぷという音がしている。まるでプールに潜っている時に聞くような音に、ルークが唇を尖らせた。
    「午後だけど、全然止まないね……」
     カーテンを開けて確かめるまでもない土砂降りの音に、ルークは八つ当たりのようにソファのクッションに背中から重さを預ける。雷こそ鳴っていないが、春の空は昼前ごろからずっと厚い雨雲に覆われていて暗い。それがまた、憂鬱に拍車をかける。
    「久々の父さんの休みだったのに」
    「まあな。だが、外に行けなかったのは残念だが、こんな風に家でのんびり過ごすのもいいもんだぞ」
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    recommended works

    ぱんつ二次元

    DONEED後時空で秋の夜長にパンケーキをやくアーロンのはなし(前)。アロルクだけどチェズレイの圧がつよい。全年齢です。モクチェズ匂わせをふくみます。文字数がたりなかったので、前後にわけます。「アーロン!きみはすごいな!本当にすごい!」
    「あーそーかよ、おいそこの白菜、もう食えるんじゃねぇの?」
    「いやほんっとにすごいよ――あ、この白菜おいしいな」
    「そうかよたんと食え全部食え俺は肉を食う」
     割り下のたっぷり染みたくたくたの白菜を全部ルークのお椀に取り分けて、空いたスペースに最後の肉を投入する。ついでに、中途半端に余っていたねぎと白菜としらたきを肉の隙間に適当に詰めた。簡易コンロの青白い炎でくつくつと煮えていく肉と野菜を眺めながら、アーロンは缶ビールをひとくち煽る。
     モクマ直伝、ミカグラ料理『すきやき』――鍋料理の一種か?――は、ルーク曰く、皆で鍋をつつきあうのが醍醐味らしい。わいわい団欒しながら食べるものだとか買い物の時点で熱弁していた。二人しかいねぇのに団欒っもクソもねぇだろ、と半分呆れたけれど。
     まあ、悪くない。なんだかんだで会うのは久しぶりだし、久々にゆっくり飯を食う時間ってのも、まあ、たまにはあったっていい。出来上がりを待つ間、いつかみたいにくだらない言い合いに興じるのだって、悪くなかった。
     ああ、悪くなかっ『た』。
     過去形だ。
     ほんの一時間前までは、 9540