ALL 異能バディ 東瀬響MOURNING渕上要の悪夢と休暇について――「貴様には人の心がないのか」 ビクリと体が反応したのをきっかけに目を覚ました。 嫌な夢だったと、たぶん思う。何も覚えてはいないのに、あの言葉だけがふかくふかく突き刺さっている。 ブブッと枕元に置いたスマホが鳴って、5時半を表示するその下に2つメッセージが表示されていた。さきほど自分が目覚めたのはこの最初の通知によるものだったらしい。『今日は丸一日オフでいいよ』『後輩の指導も休むこと』 普段は必要ないことまで喋るくせに、この名雲真昼という男は活字になると簡潔だ。それでいて有無を言わさないのだから、僕はまだ眠っていることにしてスマホを枕元に伏せた。「心……」 ないのだろうか。自分には。 心がどこにあるかわからないので、なんとなく心臓付近に触れてみる。 ……昔、穏やかに心拍するそいつが止まった日のことを思い出す。『貴様には人の心がないのか』 空いた左腕で無理やり目を閉ざした。鼓膜を劈くような叫びを聞いたのは初めてだった。 人が死ぬのは今に始まったことじゃない。 人の死を見るのは、あれが初めてじゃない。 だから、涙なんか出なかった。泣ける 2104 1