一歩づつ──デートでもしませんか。
廻屋からそう誘われたのは、春の日差しが暖かくなり始めたお昼前。
いつぞやのお月見で、一応は恋人となったものの。いつも通りにセンターに顔を出し、いつも通りに調査に向かって、いつも通りに調査報告をして解散、という進展のなさだったのに。一体どういう風の吹きましなのか。
でーと、デート……。口にして反芻して首を傾げるあざみに、廻屋は「映画とかいかがです?」と付け足した。
「見たい映画があってですね。ホラー映画なんですけど」
「えっ……それは、ちょっと……オコトワリシマス……」
思わず小声になってしまうあざみに、廻屋はクスクスと笑いだす。
「安心ください、怖くないですよ」
「ホントですか……?」
1938