ただずっとバスケをしていたい。うまくなりたい。
なんのためにと聞かれたら、よりバスケがうまくなるために、と答えるに違いない。
一度もそれを疑ったことなどない。
強くなりたい。自分が強いと証明したい。
でも本当は──────
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何かが噛み合っていない。
トレーナーやコーチとのコミニュケーションは密に取っている。
エージェントのことも信頼している。
チームメイトはみな勝ち気に満ち、プロらしく遠慮はない。日々良いプレッシャーと刺激をもたらしてくれる。
アメリカのプロバスケットボールリーグ、数少ない日本人として活躍する若い流川。
だけどなにかが空回りしていた。
流川の人生において経験したことのない感覚だった。
眠りが常より浅い気がする。ボールの感触がどこか遠い。
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