アポトーシス 長い炎髪を鋏で裁断する。嗚咽のない静寂な落涙が悲壮感を増長し、細く頼りない体躯が小刻みに震えていた。
握りしめている蒼炎が呪いの根元から分断されたことで灯火を絶つ。長い前髪から恨めしそうな月明かりが扉の前に立っている少女を捉えた。
「また死にたくなっちゃったんですか?」
繰り返す自傷に等しい行為に対し、呆れた声が怒りを髪に灯した。抑え込めず可視化する感情は呪いだ。心というままならない不確定かつ不安定なバグを秘匿させてくれない。遥か昔、それこそ神話の時代に侵した先祖の罪を、今代まで粛々と身に宿して祝福と呪いと共に産み落とされる。哀れで醜い矮小な存在。
「運命の女神には見放されてるし。世界には神様ってやつが山ほどいるていうのにさ、誰も救ってなんかくれないんだ……こんな悲しいことってある?」
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