ショコラティエのワルツ ワルツは三拍子。強く弱く弱くと一定のリズムを刻む。
カションカションカションとホイッパーがボウルの底にぶつかる。ダンスレッスン中のボールルームの静寂唯一の音色と近しいものを感じるのは、初めてのことに悪戦苦闘しているが故に、時折ワルツのテンポを外れるからだろう。
窓の外は粉砂糖を振りかけたガトーショコラ以上の冬景色。
思考がすでにチョコレートに侵食されていて、これはもう脳まで甘くなっているに違いないとスカリーはため息をついた。
溶かして固めるだけ。誰ですかそんなことを言った方は。
溶けたと思ったら分離して硬くなりポロポロになる。を繰り返して三回目。
材料が底をついてしまった。
「はあ……こんなんじゃ渡せるわけない」
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