タイムイズマネー 口約束は嫌いだ。不確定だから。証明できないから。
だというのに「忘れないでくださいね」そう言ったのだ。この僕が。自分の意思で。
ああ、もしかしたら期待してなかったのかもしれない。
霞のように目の前から消えるかもしれない。流れる水のように止まらないで、いつの間にかどこか遠くへ行ってしまうんじゃないか……なんて。
僕は大人になりたかった。
でもあの人は子供のままでいたかった。
時間が経つ事を恐れているように見えた。
「今年もお祝いしてくださるんでしょう?」
小さな背中に問い掛ければ、黒檀の瞳が僅かに揺れた。
哀愁の混ざる優しい色だ。
子供のままでいたいはずなのに、彼女はどんどん大人になっていく。
置き去りにされているのは僕の方だ。
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