詐欺師並に巧み「なんであの2人を選んだの?」
ポムフィオーレ寮。その寮長であるヴィルは目の前にいる恋人にスキンケアを施しながら訊ねた。化粧水を含んだコットンが風呂上がりの肌に潤いを与えていく。元から綺麗な肌をつやつやに輝かせながら、アズールは特に表情も変えずに答えた。
「何かご不満でも?」
「別に。ただ気になっただけ」
こっちが訊いてるのよ、という言葉をなんとか飲み込んだ。
今日は大変な1日だった。どこから漏れたのか知らないがヴィルが映画祭に同行させる穴埋めを探していることが噂になり、学園の中庭で大勢に囲まれた。もちろん、その中に恋人であるアズールもいた。
噂が広まらなければ彼を誘うつもりであったがこうも騒ぎになった上でヴィルが個人を指名すれば後ろ指をさされかねない。
2656