書生物語3章 夏も終盤に差し掛かって過ごしやすい陽気になった。類の足もすっかり完治し、今は元気に機械いじりに精を出している。まあ、治る前から機械いじりはしていたが。オレがいくら大人しくしていろと言っても、あっちから爆発音がした、こっちから異臭がする、と遠くから類の実験で巻き起こされた騒ぎが聞こえていた。もっと自分を大切にしてほしいと困ってはいるが、類の優秀さを疑うつもりはない。今日もその優秀さを裏付けるようなことを伝えに行くところだ。
類がいつも籠っている書斎の扉を開ける。
「類はいるか!」
「ここにいるよ。どうしたんだい」
文机の前に座っている類の横に腰を下ろす。机の横に置いてある時計はかちこちと音をならし、今は昼の三時を指していた。
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