割れ鍋に綴じ蓋EMERGENCY、EMERGENCY。即座に行動を制限せよ。
脳内で無機質なアラート音が鳴り響く。なんて事はない、聞き慣れた損傷防衛プログラムに大人しく従った。姿勢を中腰のまま保ち、静かに胸部に取り付けられたファンを回し、口から空気を放出する。人間的動作でいう、所謂『深呼吸』と呼ばれる行動をしてから全身の伝達回路に信号を送り体を筋肉を弛緩させた。
やばい。
あまりの痛みに手の感覚が鈍くなる。今持ち上げている最中の捜査資料をぶちまけたら、それこそ目も当てられない。ゆっくりと腕の力を抜き、床に段ボールを落下させた。どすん、と鈍い音が響いたが誰かが振り返るほどではない。そもそもこの資料保管倉庫B号-03にはネロ以外誰もいなかった。
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