🏦見世物小屋に売られてた幼ししさんと、それを見つけた子さめ先生のはなし。③3.
秋。秋になったらまた会える。秋までに。
村雨はアルビノと、隔世遺伝について自主勉強を費やした。それらは全く別物なのだと、ししがみに、教えなくてもいい、ただいつか聞かれた時に言えるように、根拠を述べてやれるように。
進路を医学に決めた。兄は既に商学部へ進学していたので、次男の決断に家族は大層喜んだ。
盛夏を過ぎ、朝晩に秋の気配を感じるようになった頃。新聞に、花園神社の酉の市の予告が出ているのを見つけ、切り抜いてスクラップブックに貼った。
朝、顔を洗う水が冷たいと感じるようになった頃。ししがみは相変わらず小屋では水浴びをしているのだろうかと心配になった。
話をした時は健康なようだったが、栄養状態に関しては決して十分ではなかった。頼りなかった肩回りや二の腕を思い出す。もし水浴びをしているとしたら、エネルギー不足で睡眠前にすら体温が戻らず、寒い思いをしているかもしれない。
9046