花嫁の未知 ガチャッと扉の開く音の次に、バタバタと足音がする。次はきっと……ほら、いつもとおんなじ。背中にどすんと重みがきた。
「銀河くん!」
「またお前は……ノックしろって言ったよな」
「したよ!」
ノックの音なんて聞こえなかった。お前だけなら勝手に入ってもいい、なんて言ったのが悪かったのか、いつでも構わず突入してくる。
そして、幼い頃から変わらない、真っ先に背中に飛びかかる癖。
「嘘つくな。あと一ノ瀬先生な」
「銀河くんは銀河くんだもん」
「朝日奈」
「はぁい。一ノ瀬せんせー」
二人きりなんだからいいじゃんって文句、丸聞こえですよ、お嬢さん。普段から全然『一ノ瀬先生』なんて呼びやしない。
するりと前に回ってきた彼女の尖った唇を、もっと尖らせるように頬を摘んでやる。
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