戦場の神様たぶん好ましく思っていた。理性的で、人間らしくて、深い憎悪をたぎらせたそのひとを。というより、親近感を覚えていたのだ。だってみな、彼女を環境によって育まれた化け物のように呼ぶから。
“悪魔”と対峙したミーシィヤさんは、確かにあの場において唯一、人民を守る神だった。
でも、横たわり息も絶え絶えにわたしを見るこの人は既にただのか弱い人間だった。守るべきもの。屠るべきもの。その線引きが人より曖昧な自覚はどうにもあって、だからこそわたしは英雄なんて化け物をやっている。そのための力があったからそこに立ち、自分の想いに沿ってふるうこと。彼女とわたしに違いはない。戦場に切実なこころを抱いているかいないかの違いはあれど。
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