ジュンくん! と聞き慣れた声が気がした。辺りを見回したが誰も居ない、何よりここは星奏館の自室で、同室であるこはくも先程出掛けたばかり。今この部屋にはジュンひとりしか居ないはずだ。
日々相方の声を聞き過ぎて脳内で再生されたのかもしれない、時々ふと昔聴いた曲が頭の中で流れるような、恐らくそれに近いものだろうと思ってテレビでも観ようとソファへ移動しようとする。しかし再びどこからかジュンくん! と呼ぶ声がした。
ジュンくん! なにするの! 危うくこのぼくを踏み潰すところだったね!
そう聞こえてジュンは咄嗟に下を見て、仰天した。
「ジュンくん!!」
「…………はぁああああああっ!?」
ジュンの足元には、手の平に乗りそうなサイズの巴日和がちょこんと立ってジュンを懸命に見上げていた。
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