「僕に恋愛とはなんたるかを教えて欲しい!」
「お、お、おう、お兄ちゃんに任せとけよ」
──この日、故郷の次期君主にして『Crazy:B』のリーダー、天城燐音は人生で一、二を争うピンチが迫っていた。
燐音はつい十分ほど前に人生初めての恋人が出来た。相手は事もあろうか同じ血を分けた弟である天城一彩、しかし兄弟同士である事に関しては長い時間を掛けてさんざん悩み抜いた後でありその辺りの葛藤は割愛するが、紆余曲折あって晴れて結ばれる事の出来た二人──特に燐音にとっての新たな難題が待ち受けていた。
誰もいない夜の空中庭園で、一彩を呼び出した燐音は弟に向かって愛の告白をした。燐音が腹を決めるのに非常に時間を掛けただけで一彩が燐音に向ける愛情は兄弟愛だけではなく、恋情が含まれている事には気付いていたのでこれは賭けでも何でもない勝ち確。予想通り一彩はそれはもう嬉しそうに表情を輝かせて告白を受け入れた。
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