「打楽器ですか」
椅子の埃を手で払い、グランドピアノにかけられたあの布を取り去りと、忙しく動いている安竜は、振り向かないままに応えてくる。「打楽器っていうと、あれですよね。ティンパニ、ドラムとか、そういうの」ちょうどそこにあるみたいな。かれが指した黒い扉の向こうには、たしかに軽音楽部の使っている楽器がしまってある。
「おれは繊細な神経をしていないもので、あれの音の違いとか良し悪しがわからないというか、はっきり申し上げてあまり興味がないんですよね。思えば習ったことがありません」
安竜は座り、楽譜の冊子を手に取った。合唱の課題曲のところで指を止め、折り曲げて思いきり癖づけて、めいっぱいに開いて譜面台へ。
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