レオアズ「――あなたがいけないんだ!」
頭に血がのぼり、気がつけばテーブルを叩きつけながら立ち上がって怒号を浴びせていた。
前には険しい顔した恋人が。立ち上がった拍子に椅子は倒れ、胸ぐらを掴んで引き寄せられる。息苦しさが増すが、負けじと目力強く三角にさせた。
柳眉を逆立てる彼がぎりと歯軋りし、諦観した様子を、怒りを顕にしていた自分は気づかなかった。押し戻すように襟を放し、ふらついた。喉を抑えて咳を一回、襟を整える間を置くことなく怒りに満ちた気配が鎮まる。
「――ああそうかよ」
感情を抑制したバリトンを僅かに下げる。待って、と手を伸ばしても既に遅く、彼は背を向け出て行ってしまった。玄関から施錠された重重しい音が先か、血の気を引くのが先だったか、同時だったか。
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