血迷いました書きたいところだけ
「ちょちょちょ、ちょっと待ってマジで誤解してるから」
お願いマジで聞いて、と言った彼は珍しく焦っていて慌てているようだった。
「……なに」
確かに見たのは一瞬だったけどすごく背の高い綺麗な人だったのは今でも思い出せる。すらりとした手脚が綺麗で、横顔も見えたけど切れ長の瞳が綺麗だった。だから、私じゃダメだって思ったのに。あの時のことを思い出してまたじわりと涙が滲んだ。
唇を噛んで、ぎゅと手を握り締める。爪が食い込む痛みなんかじゃ、この胸の痛みを掻き消すことは出来なかった。
「あれ! 女じゃねぇの!」
「…………は?」
いや流石にそんな嘘つかれても……それで誤魔化せると思われてんの? 唇が千切れそうなほど痛くて、手から血でも出てるのではないかというほど握り締める力が増していた。
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