星とともにたーまやー。花火を讃える声が遠雷のように微かに夜に響く。猗窩座に手を引かれ煉獄が辿り着いたのは、人混みから遠く離れた林のなかだった。僅かに途切れた木々の隙間からは、夜空と花火が切り取られてよく見える。その癖、辿り着くまでの足場の悪さも相俟って人気はない。言ってしまえば穴場というものだった。
猗窩座がわざわざ花火の為に穴場を調べるような男ではないと知っているからこそ、素直な感嘆が口をつく。
「凄いな。よくこんな場所を知っていたな、猗窩座!」
「偶然だがな」
しれっとし顔のまま淡々と返る声にはやはり得意気な響きはない。事実、猗窩座がこの場を知りえたのは単なる偶然でしかなかったからだ。その程度は説明するまでもないと、隣り合い柔らかに生えた草の上に浴衣が汚れることも気にせず腰掛けて花火を見上げる。
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