星に願いを/母の密告星に願いを
「お前は神話のピュグマリオーンを知っているか?」
普段は仏頂面の同期が珍しく顔を赤くしだらしない表情をしていた。ディノとは予定が合わず、2人で酒盛りをしていたところ、酔いが回ったブラッドからの唐突な問い。質問の意図が読めず聞き返す。
「彫刻の像が人間になるやつだろ?」
「フェイスはな、弟が欲しかった俺が造ったんだ」
「は? 何を言ってるんだ」
思わずグラスを落としそうになった。
当然何を言うのかと見つめているとこちらのことなど気にせず話を続ける。
勉学に飽きた齢十にも満たないブラッド少年は工作用の粘土で弟を作成しそれはもう大層可愛がったらしい。弟に本を読み、物語を聴かせ幾つも夜を越えたある日粘土細工の弟が人間の弟になったんだ、と。
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