特別優待彼氏席 アンダーグラウンドなロケーション。シャッターの向こうを潜ればまるで飲み込むように続く暗がりに視界を奪われど、闇が深まるにつれ心は怖気付くどころか、この先に待つもの目当てに浮き足立っていた。
切れかけたネオンが唯一の明かり。それらを目印に、ゴミやら箱やらでごちゃついた足場に十分気を付けてシャッター街の一本道を進むことしばらく。おどろおどろしい雰囲気さえある明かりが急にギラついた頃に突如現れるライブハウスがある。
リーグ公認スタジアム。スパイクタウンのあくジム。
「チケット拝見しまぁす」
「ぁ……はい」
色とりどりのストリートアートが覆う分厚い扉の前、ショッキングピンクに髪を染めた受付担当の女の人にスマホ画面を見せる。「あん……? 失礼しまぁす」とやたら間延びする声でスマホを奪われ、ついついとスマホを操作すること数秒。訝しげだった受付さんは目的の表示を見つけたのか、ニコリと微笑みブツを返してくれた。
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