無題「治を駄目にした」と連絡を受けた侑。いつもの如く、北のセーフハウスで待っていたらこれだ。カッと血が頭に昇る感覚の後は覚えていない。地下へのエレベーターすら待つのが億劫だった。
「サム!」
いつになっても治のことを心配する。侑のことを心配する治も時々いるが、稀である。「侑は死なない。俺が死ぬまで俺が死なせないから」というのが理由だ。
一目散に助手席の扉をあけた侑。治の姿は北によって元あったように戻されたが、肌が見えている箇所が少し。そして精液独特の匂い。スナによって負わされた怪我の数々。ぐったりとしているようでただただ寝ているだけの、無防備な治がある。侑はとりあえず脈を確認しようと首筋を晒した。しかし、その手は脈を計ることはなかった。首にできた手形。
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