薄暗く、どこかじめじめとした雰囲気を醸し出す監獄の中を歩く。
外の季節は冬だろうか。夏だろうか。季節なんて最初からなかったかのように、すっかり監獄での生活に慣れてしまっていた。だけど、そんな監獄が嫌いじゃない。季節がわからないってことは、外は雪が降っている可能性だってある。極寒の世界が広がっているかもしれない。
そう思えば、監獄の中にも雪が降るはずだ。私の世界は、そうやってできている。
冬は私のすべてが始まって全てが終わった季節。
ここにいれば、ずっと冬を感じられる。空想でも何でもいい。私の世界はずっと凍ったままでいい。
「雪、ここ、案外良いところだね」
今日も私は雪に話しかける。相変わらず声は帰ってこないけれど、話し続ければ現れてくれるはずだ。最初の出会いだってそうだったのだから。
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