お気に召すまま今、恋をしている。
単身ブラジル修行から帰ってきた日本で、バレーの他に好きな人ができた。その気持ちの始まりは、まるで漫画のワンシーンのようで、ジャッカルのトライアウトを終え正式に入団が決まった、あの6月にしては珍しくカラッと晴れたあの日。早速挨拶に赴いた本拠地には、殆どのメンバーが集まり出迎えてくれた。その中にいたのが、宮侑。今密かに、憧れている人。
今や知らない人はいない、は言いすぎかもしれないが、日本男子バレーと言えばその名前が出てくる程認知度の高まった彼は、監督の紹介のもと深々と下げられたオレンジ頭を見て、一瞬ぽかんと口を開け、そしてすぐ笑った。笑ったのだ。その笑顔に、落ちてしまった。
あの人の技術はもともと知っている。人柄もなんとなく知っていた。あまり良い性格はしていなかったはず。そんな侑が、ぱっと笑って「きたな」と楽しそうにはにかむ様子に、心臓が初めて聞く音を出したのを、鮮明に覚えている。
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